古本屋めぐりというやつは、実に疲れる「遊び」である。何しろ本を手に入れることだけでなく、あてもなく探しまわるプロセスそのものが魅力的なのだからやっかいだ。たとえば、あの本があの店になかったら今日は帰ろうという構えで、とある古本屋の扉を開くとする。しかしその途端目の前にひろがってしまうのは、古今東西の良書悪書に奇書難書、なんでもござれのめくるめく古本ワールド。探究本がなかったからといってすごすご家路に着くなんてことは、理性が許しても好奇心が許しちゃくれない。本から本へ、店から店へと目移りにつぐ目移りで夢中になって渡り歩いていたら早や夕暮れ。ハッと我にかえれば喉は渇くしお目々はショボショボ、腹の虫がくぅと鳴くかと思や膝はガクガク笑っていやがる……なんてことはザラ。ちょいと散歩のつもりでもいつの間にか気力体力を激しく消耗してしまうという恐ろしい魔力が、どうやら古本街には潜んでいるようだ。まして世界一の古本街ともいわれる神保町においてをや、である。
そこで、永年神保町に根を張ってやってきた者の務めとして、神保町を訪れる方たちに、古本屋めぐりの疲れを癒してくれること請け合いの飲食店をいくつか厳選して紹介したいと思う。どれも良店なのでランチタイムは常時大混雑、十一時半頃にはいったん本棚から目を離して入店したほうがよいかもしれない。夜は予約を入れて、ゆっくりと美味しい食事を楽しむというのもオツなものだ。
まずは神保町といえばカレー、ということで本格インド料理の「マンダラ」から。自慢のカレーは全19種類、なかでも一番人気はチキンバターマサラカレーだ。備長炭使用のタンドール釜で焼き上げられたナンも絶品、ゼヒ味わっていただきたい。おいしいだけではなく、ブレンドされた数十種のスパイスが神保町を歩き回る馬力をつけてくれることは間違いない。カレーってやつはほんとにえらい!
タイ風カレーが好みという方には「メナムのほとり」。定番のグリーンカレーとレッドカレーでココナッツの風味と辛さの融合を楽しむのもいいが、イチオシメニューは「海老入り春雨の土鍋蒸し」である。出来上がりまで少々時間はかかるものの、一度食べたらヤミツキの味。なんといってもこの店、深夜までタイ料理が楽しめるというのが素晴らしい。ちなみに「メナムのほとり」の同系列店には、タイのスキヤキ「タイスキ」や豊富なタイ料理が勢揃いのレストラン「ムアンタイ・なべ」もある。こちらでは異国の香り漂う鍋を満喫しよう。
インド、タイ、ときて忘れちゃいけないのが欧風カレーの「ボンディ」。まろやかでコクのある味わいとスパイシーな香りが絶妙にマッチした「ボンディ」のカレーは、フランス料理のソースにカレーの素材が加えられて生み出されたという。まさに「インドの香り、ヨーロッパの味」だ。付け合せの茹でジャガイモも嬉しい。
さて、お次はちょっと気分を変えてブラジル料理の「ムイト・ボン」は如何。陽気で明るいこの店では、ボリュームたっぷりの肉料理やヘルシーな豆や野菜を使ったブラジルの本場家庭料理が味わえる。ブラジルのお酒ピンザをベースに砂糖とライムで飲むカイピリーニャの爽やかな香りと甘さにブラジルの風と熱気を感じよう。
なんともエスニックなラインナップとなったが、最後にもう一軒、ステーキ&ワイン・レストラン「神房」を紹介したい。オススメは、外国産から国産黒毛和牛まで幅広く取り揃えたステーキはもちろん、デミグラスソースのハンバーグやビーフシチューなど。こじんまりと落ち着いた雰囲気の店内で、自慢の豪州ワイン―その名も「JINBOUR WINE」!―の杯を傾けるのも実によい気分だ。古本屋めぐりで疲れ切った体に、極上のステーキとワインで明日への活力をドカンと注入するというのはどうだろう。
以上、魅力的な店を紹介したが、当然のことながら神保町にはまだまだ多くの名店が存在する。
楽しく充実した古本屋めぐりの休憩タイムや締め括りには、ゼヒとも素敵な時を過ごしたいものだ。神保町を訪れる方たちそれぞれに、ゼヒとも実際に歩き回って自分なりのオススメ・スポットを見つけ出してほしいと思う。その際小宮山書店にもふらりと立ち寄ってくださるなら、こんなに嬉しいことはないのである。
