さぼうる

さぼうる(さぼうる)

レトロカフェの代名詞的存在

 店の前にポツンと佇む赤い公衆電話。落書きだらけのレンガ壁。温かみのある木製のテーブルは、開店時にスタッフが自らの手で作ったという。

買ったばかりの文庫本を一心不乱に読みふける学生。言葉を交わさずとも、ただ見つめあっているだけで幸せそうな若いカップル。そして、紫煙をくゆらせながら打ち合わせをする作家と編集者たち……。完全なまでに「昭和の面影」が残っている喫茶店、それが『さぼうる』だ。

「かれこれ半世紀。神保町とは本当に長い付き合いになりました」と感慨深げにふりかえるのは店主の鈴木さん。52年という歴史があるだけに常連客やリピーターは数知れず。「気の置けない友人たちと夢を語り、恋人と愛を語り、そして将来を誓い合った。それこそコーヒー1杯で何時間もねばったものでしたね。私にとってこの店は青春そのものです」と語るのは、学生時代にここで恋人と逢瀬を重ね、ついに結婚したというオールドファン。現在は東京を離れているが、銀婚式のお祝いに25年ぶりに来店したという。こういうエピソードを聞くたびに、「私が売っているのはただのコーヒーや紅茶じゃありません。この1杯のコーヒーのなかには、いくつもの『夢』や『ドラマ』、そしてかけがえのない『思い出』が詰まっているんですよ」と微笑む鈴木さんの言葉が胸に沁みてくる。そして我々もまた、「夢と思い出のかけら」を求めて、ここ『さぼうる』に足を向けたくなるのだ。

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